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「私たちはこの仕事をこの職場で続けたいだけです」と訴える名古屋市立保育園の非正規職員ら=2024年10月4日、衆院議員会館、高橋諒子撮影

 名古屋市立保育園で働く非正規の保育士らの間で雇い止めの不安が広がっているとして、全国労働組合総連合などが4日、雇用の継続を求めて会見した。衆院選への立候補を表明した河村たかし市長に対し「退任前に、任命権者としての責任を果たしてほしい」と訴えている。

 市によると、市立保育園では現在計約1800人が会計年度任用職員(非正規職員)として働いている。雇用期間は原則1年で、筆記や面接などの公募試験で採用し、4回までは公募試験なしで採用を継続できる。今年度末でその期限が切れる職員は、約1200人と7割弱にのぼる。

 市立保育園で30年以上の勤務経験がある保育補助員の尾崎よしみさんは会見で「自分なりに子ども観を持ち、プロとして働いてきた。辞める、辞めないは自分の意思で決めたい」と訴えた。「突然収入が絶たれたら家族の人生も変わってしまう」「パートとはいえ常にスキルアップを目指し仕事を続けているが、むなしさを感じる」といった声も寄せられているという。

 不安定な雇用状況を訴える声に対し、市は「全員が失業するわけではなく、公募を受ければまた任用される可能性はある」と説明している。

 これに対し、会見に参加した東海労働弁護団事務局長の田巻紘子弁護士は「保育園を運営する限り、現状では必ず必要となる職員だ。職務に継続性、永続性があり、そもそも期間の定めのある会計年度任用職員として任用されるべきではない」と指摘する。

 非正規職員をめぐっては、国がすでに雇用継続期間の上限を撤廃している。人事院は6月、雇用の不安定さを訴える非常勤の国家公務員の声などを考慮し「優秀な人材の流出につながる」として上限を撤廃。これに合わせて総務省も自治体向けの非正規職員の運用マニュアルを改正したが、市は「国と市では業務内容が違う。国の制度が変わったからといって簡単に変えられるものではなく、慎重に検討している」として判断を保留している。(伊藤舞虹)

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